寒い朝、県境の峠は、春の気配どころか雪景色。道路わきや家の屋根にもうっすら雪が残っていた。
昼すぎて、帰りに車を停めてみた川原にはかすかに春の足音が・・・芽吹き始めた木々、この葉っぱたちが青々と手を広げる頃にまた来たい。
そして真っ赤に色づいて、何もかもがキラキラと輝く秋の午後を思う。
四季、日本人に生まれて、ここに暮らせてよかった。
帰って、削りかけていた桜の木のレターナイフを仕上げた。
何年も前に切った山桜の木のほんの切れ端だけど、削る時、ペーパーで磨く時には良い香りがたつ。
封筒を明ける時に手で破るとビリビリになって内容までいいものには思えなくなる、カッターナイフでは鋭すぎて感じが悪い。長らく竹で作った物を使っていたけど、最近は見当たらずに手でビリビリに破っていた。
レターナイフとの出会いは大学4年の時、卒論を指導してもらった先生が中国のお土産としてくれたもの、あれは竹製で漆がぬってあったな。ヨーロッパのそれは金属製で飾りがついていて・・アンティークではあるけど好みでも実用的でもない。やっぱり僕のこれが最高だと思う。
毎日使う物だから、削りたての木地の色もだんだんと手垢になじんで良い色になってくるのだろう。ペン立ての空き缶にさすと、かすかに桜の匂いがして、少し気分がいい。