怖い?

怖い?エロ?これは今年の片山九郎右衛門薪能のポスターコンペに出品したもの、珍しく、絵を何回も描き直した苦心の作ですが、なにせ、モデルが海女(あま)の亡霊なもので・・・おかげで恐ろしげなポスターになってしまいました。採用は無理っぽいですな。

単にこのポスターを街角に貼って、夜の通行人をビビらそうとしたんじゃなくて、それなりに深い意味を込めたのです。込めた意味は下に紹介しますが、僕的には女性の裸体を描いた事も含めて、かなりチャレンジ出来た事に満足です。おそらく街角に貼られる事は無いと思うのでここで日の目を当てておくことにします。

デザイン意図>>

■タイトル
「母の愛 夕顔の愛」

■テーマ
「重なり合う二人の女性の亡霊、その愛と情念を表現したポスター」

「半蔀(はじとみ)」と「海士(あま)」、今回上演される二つの能に共通するのは女性の亡霊が登場するという事です。我が子の為に、自らの乳房を掻き切った海士。死んでもなお、光源氏との恋の思い出の中で舞い続ける夕顔。二人の姿はどちらも深い愛情に生きた女性の揺るぎない強さを物語っています。本ポスターでは二人の愛を、ただ美しく描くのではなく「情念の深さ、女性の底知れぬ強さ」という事を前面に出して表現ようと試みました。

■デザイン表現
本デザインは「海士」の1場面、海底の竜宮から取り返した面工不背の珠を自らの乳房の下を掻き切って隠し、命綱に掴まって海面へ浮き上がろうとするとこころを主題として描いています。同時に、もう一人の女性、夕顔の唇や目、乳房などを細い線で重ねて描き込み、彼女が光源氏を思いつつ舞を舞う姿もイメージしています。

暗く恐ろしげな背景から浮かび上がる仏像のような無表情と乳房というの違和感の中に「女性の情念」を表現しましたが、中央に「母の愛、夕顔の愛」というコピーを書き、その背面に血の色で「母、夕顔」と重ね書きすることで、この絵の冷たさの中に、どこか女性の愛の温かさが宿っている事を意識し、海士の表情の中に「慈しみ」を見いだす事が出来るのではないでしょうか。

本デザインは能のポスターでありながら能を直接イメージさせる表現を取り去り、能によって演じられる世界のみを表現するという方法をとりました。このことが今回の能に対する興味を深める事につながると思っています。

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